大阪佃店の思い出・・。
今はなきすかいらーく、その会社にぼくは費やした時間と情熱を思い出させずにいられない。
UPDATE 2012年8月2日
注意、このページはすかいらーく本部さま、会社さまとなんら関係のあるものではありません、
問題のあるかたはメールでおしらせください。osatani@osatani.com2012年8月9日
vol.2

あわてて、レジにゆくと、こわそうなおじさんが待ち構えていた

「おい、おまえ 責任者か?」

「はい、大変申し訳けありません、子供様のおけがはありませんか?」

フロートグラスをみると、一部分がわれており、破片がグラスのなかからでてきた。
お客さんは40過ぎぐらいのひとで、男子供さんときていた。

「おまえな、どうすんねん、飲み込んだら、いや飲み込んだかもしれないぞ!」

ぼくは冷や汗が出るのを感じた。
焦る気持ちをおさえ、
「病院にいきましょうか?」そう告げると。

「そうやな、もう夜やし、明日また様子みるわ、」
「お客様、このたびは大変失礼なことをいたしましてもうしわけありません、
お客様のご住所と電話番号を教えてくださいますか?」

そういってめもを渡し書いてもらった。
帰ろうとされるので、レジに向かい
「このたびはお代金のほうはいただくことができません」
「いや、払う!」
そういって、レジで支払いをされた。

「おまえな、ええか、これから俺の家までおくれ!」
そういわれ、自分の車を出し、親子をのせ家まで送った。
家は少し離れた御幣島のクリーニング屋さんだった。

「ええか、ここが俺の店や・・」
「はい」
「おれがええいうまで、おまえが毎日子供の様子を見に来い!
子供になにかあったら、ただではすまんぞ!」
「はい、わかりました・・」

ぼくはすごすごと、店に帰り、営業報告の日報の苦情のレポートを書いた。
そして、グラスを再び探しにいった。
作ったバイトの学生は、しょげていた。
「すいません、ぼくがわるいんです」
「そうやな、でもなんでグラスがわれたのか、わかるか?」
「ぼくが、クリームソーダ作るときに、炭酸を抜くために
ロングスプーンでかき混ぜすぎた、そのとき、グラスにあたって
割れたのだと思います。」
「なんで、気がつかなかったんや?」
「はい、忙しくてカウンターラッシュで、パフェも何個かあったし
レジも込んでて・・」

ぼくは、マニュアルを思い出した。
「炭酸を抜くのはバースプーンやろ、グラスは薄いんや、
堅いロングスプーンでかきましわしたら、われるやろ・・」
「すいません、それで、どうなりましたか?」
「病院にゆこう、といったのだが・・。でも、何とかするわ」
そういいながら、苦情のグラスを取り出した、
ダスターの上に破片を並べ、つなぎ合わした。
「あ、ひとつ、破片がたらへんぞ、おい、のみこんだかもしれへん」
「そうですね、どうしましょう?」
「しかし、クリームソーダを飲むときはストローやしな・・」
「でも、アイスクリームはスプーンで食べますよ、そこに混じっていたら
飲み込んで、おなかの中で切れたらたいへんですよ!」
「あほか、おまえ!そんなこというな!」
と、いいながら、バイトのいうとうりかもしれない・・。

ああ。またもや苦情を起こしてしまった。店長に翌日報告すると、
「しゃあないな・・」でおわりだった、ごうてんは家まで謝りにゆくつもりは
さらさらないようだ・・。

それから毎日、休みの日も遅番のひもその苦情のクリーニング屋さんに
訪問が続いた・・。

「こんばんわ!」
僕を無視しながら、ひたすらアイロンをおじさんはかけていた。
「あ、おまえか、きょうは大丈夫みたいやな、息子は学校もいったしな・」

翌日もその次も訪問し、繰り返した。

6日かめだろうか、
「こんばんわ、今日は息子さん、具合は大丈夫でしょうか?」
「ああ、大丈夫や、まあ、はいれや、お茶でものみ・・」
急に優しくなった。
仕事のワイシャツのアイロンがけの手は止めなかった、
奥さんが奥の部屋からでてきて、お茶をもってきた。
「すいません、このたびはとんでもないことを起こしてし訳ありませんでした」

すぐに逃げるように奥さんは奥の部屋に消えた。

それでもぼくは、だまってひとりで店の中につったっていた。

アイロンがけの手を止めず、おじさんは、話し出した。
「これな、ワイシャツ、ボタンがあるやろ、ボタンが割れるんや、ボタンをわらんように機械で回して、プレスにかけて袋にいれてな、それでもボタンがわれてるのを見つけたりするんや、プレスにかけるより、手でアイロンをかけたほうがはやいこともある、ボタンをわらんからな・・」
「はい、」
ぼくは、話を聞いていた。
「おまえがな、自分の店でああいうことがおきたらどうおもう?」
「はい、すいません」
「すいませんはもぅいうな、自分の店と違うやろ、」
「はい、そうです、社員です」
「おまえが経営してやっている店でそういうことをさせるか?」
「はい、わかりません」
「そうやな、わからんやろな」
「はい、すいません」
「すいませんはいいねん、おまえ年いくつや?」
「23歳です」
「大学でとるんか?」
「はあ、はい、一応でてます」

そういう話になってきて、ぼくはどうなるのか考えていた。

「おまえな、俺の自分の店でボタンひとつわれておったら、お客さんにおこられるんや、でもな、怒ってくれているうちはいいんや」

「怒ってくれるのはいいのですか?」
「そうや、怒らんとそのまま、よその店にいかれたらおしまいや・・」
「はい」
「おまえら、給与もらってやろ、なんぼかしれんけど、お客さんが減っても
もらえるやろ、」
「俺らは、お客さんが減ったら生きてゆかれへんのや・・」
「はい、すいません」といって口を押さえた。

「もう、今日でこんでええ、ようわかったか、勉強したか?最後まで店長でてこんかったなあ、どないしてんねん・・」

ぼくは、内心、ほっとしていた。
もうこんでええ、の一言で解放された。

ぼくは、それから店にゆこうと車を走らせた、
左門ど橋を過ぎ、店のまえに車をとめ、
神崎川のほうに少し歩いた、その日は休みのひだった。

流れる汚いくさい夜の川をみながら、めげていた。
もう、逃げたい気分だった。
いつやめようか、いつやめようか
そればかり考えていた。

そのときは、お客さんの言ってる言葉の意味はわからなかった。
しかしだ、30年後自分が商売しだしてわかるようになってきた、
それまで、覚えていた自分がいたのだ。

気を取り直し、店長に報告し、SVにもよくやった、といわれ。
またもや普通の営業に戻った。

それから、6年ぐらいたったころ
GWだった。
ぼくは彼女とGWの営業もおわり、晩飯でも食いに
フォルクスへいった。
しかし、出されたチキンは真っ赤な赤。
そして、クリームソーダ!
みごとにクリームソーダのグラスは割れていた。
ぼくは、店員を呼んだ。
「これはどういうこと!」
怒った、腹が立った。しかし、おろおろして誰もでてこない、
おろおろはわかる、しかし、誰もでてこない・・。
ああ、バイトなかりでやらせてるんだ・・。と推察した。
もう、帰ろうとした、レジでお金はいらない、といわれ、
それでも、あやまりにだれもこない、

怒ってはいけない。そう神様の声が聞こえた。

はなしは再び佃のはなしにもどる。
夜の1時上がりでベシャメルが切れ、三国に借り物にゆき、
帰ってくると、3時過ぎ。
フロアーは杉山さん、キッチンは古いバイトのWだった。
しかし、杉山さんは慌てていた。
「どうしたんですか?」
「まいった!店長を呼んでるんですが・・」
「どうしたんですか?杉山さん!」

「ライスが切れて、Wが古い冷凍ライスを出しよったんです、
それもあの団体に!黄色いごはんで」
隠れてそっと、フォールをみると、10人組の強面の労務者風の
お客さんがにらんでいた。
「おい!どないなってんねん!店長よばんかい!」

叫んでいた。ぼくは腹をくくり上着を着て、
そのお客さんの前に出て行った。

続く・・佃のはなし6へ

続く、    
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