16. 三宮店は売れに売れていた。

ランチは、いつも50か60でた、もっと、忙しい店は関東や大阪にもあったかもしれないが、ランチはビジネスマンも多かったし、近くの専門学校の生徒なども来ていた。10分ほどで満席になり、一気に伝票がキッチンに入る。
もう、時計をにらめっこして、日替わりランチを、揚げ物ならどかっとあげたり、焼いたり、ガロニ(付け合わせ)なども、できるだけ並べて、注文されるまえに既にできてるような状態にもしていた、
最初のラッシュに耐えて、提供しないと、捌くことはできない。
大変なのはフロアーだった。
満席になり、ウエティングがかかり、入り口レジ周辺には人だかり、
僕は、慌てて、キッチンから料理をだすと、
フロアーのフォローに入った。

どんどんお客さんが来られて、これも満席だからと返してはいけない。
引き留めて、待ってもらわないといけない、
回転をあげないといけない、ランチは当時消費税も無い時代で
450円か480円だった。しょぼいいまのようなランチでなく
ボリュームもあった。
「すいません、ただいま満席でございます、10分ほどお待ちいただけないでしょうか?」
ぼくは、お客さんに、言った、お客さんはどうやら、インド系の人だった。
「すいませんが、お名前と、ご人数を教えてください」
外人のひとは恥ずかしそうに
「チャック!」
と、言った。ぼくは、外人なので、そういう名前があるのかと
「はい、チャック様ですね・・」
というと、
「ノーノー、ユア、チャック!」

「???」

外人は僕の股間を指さし、再び
「ちゃっく!」といった、
ぼくは、自分のズボンを見ると、ちゃっく全開だった。
周りに居たひとは大笑い。
ぼくは、恥ずかしくて、洗い場に逃げた。

こんちゃんという、フリーターがたまにランチに入ってくれた。
でも、すこしおとなしくて神経質だった、あまたが少しはげていて
お客さんにいろいろ言われたりしていた。
それで、怒り出す。怒ると、ヒヤタンを投げて割るのだ。

「また、あのひと、きたでーーー」
ランチのはっしゃんというおばさんがみんなに声をかける、
そのお客さんは、なにかと些細なことで
文句を言われる、難解なおじさんで、
どういうことで文句を言うかと
たとえば、レジを少し打ち間違えて
ぴー、という音が出るだけでも
「なんだ!まちがえたのか!」と、怒り出すのだ。

「ぼくは、すかいらーくの株主なんだぞ!投資してるんだ
そんなことをしていて、お客さんのことをどうおもってるんだ!」

「なんで、雨の日は傘立てがないんだ?」
それに、株主優待券をいつも出される、その扱いもレジで
すこし、ややこしいので、手間取ると、
「おそい!」
という、全く迷惑な、株主様、営業妨害です。

ある日、とうとう、
こんちゃんが、その株主に言われたことに頭にきて
レジをバターンとしめ、無視をした。

株主は怒り心頭で、本部に電話をし、
本部から事業部、そこから、遅番の店長に電話がはいり
株主の家まで、謝罪にいくこととなった。
店長ははるばる逆瀬川の家まで出向き
平身低頭。

そういう、お客さんが多かった、
僕らも若いし、会社も若い。そういうのを見て
怒り出すひとは、多かった。
しかし、よくよく考えると、お客さんに対してどうあるべきかは
愚かなることが多々あったのだろう。

この項終わり



今はなき(旧)すかいらーく、その会社にぼくは費やした時間と情熱を思い出させずにいられない。

注意、このページはすかいらーく本部さま、会社さまとなんら関係のあるものではありません、