26.  五日市の話 06

広島に飛ばされ、一年が過ぎようとしていたころ、井上さんが結婚をした。持ちろんおくさんは三宮の彼女。
呼ばれて、神戸まで結婚式に行った。仲人はあの鬼の丸SVだった。
そのころ、井上さんは須磨から北鈴蘭台に異動しており
なんと、ごうてんが、新店からいきなりはずされて、北鈴にいた。
まずいメンバーでもあった。
案の定、とんでもない事件が起きた。金庫の中から売上金がなくなったのだ、
すぐに僕の店に井上さんからとんでもないことが起きたと、電話があり、
警察も動いて、犯人捜しになっていた。
それも、小店舗のガラス窓が叩き割られ、そこからセコムの通報で20分か30分で
来る間に、金庫の鍵を開けて、中身をもっていかれたということ、
金庫の鍵の定位置が、引き出しだという無様さで、
金庫キーが一つしか無く、フロアーのバイトはみんなそれを知っていたので
簡単に、犯人が見つかった、従業員の犯行であった。
ごうてんも井上さんもかなり怒られるはずであったが
同時期に山陽事業部の三宮の事務所が、泥棒に入られ
金庫の金を奪われた、それも、鍵を引き出しの中におき、丁寧に番号まで
書いてあったという。
おとがめを受けるべきは、部長であるのだが、吉沢さんがたんまり怒られて
ごうてんたちは、難を逃れた。
しかし、その後、あちこちでやはり売上金の盗難があったらしく
その事件を契機に、金庫の中に金庫を作ったのである。
金庫キーと、金庫内金庫キーという二重の構えである。

しかし、北鈴はひどい店に成り、ごうてんは、
再び、その後、飛ばされるのであった。しかも、広島大芝に
寺坂さんのあとにはいるのだ、寺坂さんはごうてんの宝塚の店のバイトだった。

家を探しに、ごうてんは広島に来た。
僕の狭いアパートに泊めてくれ、と、
ぼくの狭い部屋で、ごうてんは、すこし落ち込んでいたようだ。
「めげたわ・・・」
そういいながら、辞めたら、弁当のFCを作りたい。マニュアルを作り
どうのこうのと、夢を語りはじめた。
ぼくは、その夢を聴きながら。うとうとしていた。ぼくもいつかは店をもちたい。
そう、思いつつも、ごうてんはなんでこうなるのか、考えていた。

そして、ぼくが五日市を去り、再び四国の新しい店で働いていたころ、
寺坂先輩から電話があった。
「ごうてん、辞めるそうや・・・・」
寺坂先輩もショックだったようで、ぼくもかなりショックだった。
同期の仲のいい、西川も突然辞めてしまい。
相談もなく、ぼくが辞めたいといっても、止めていた西川が先に辞めて・・。
寺坂先輩は、そのとき、西川に僕に相談したのか、と、いって怒ったらしい・。

ぼくは、すぐにごうてんに電話した。
広島がいやだったのか、いい仕事がみつかったのか・・。
そういえば、そのときできつつあった、新神戸のでかいホテルに
密かに面接にいき、落とされた。と、井上さんはいっていた。

ぼくが、ごうてんが辞めるという話を広めて、部長がおこりだした。
「誰から、聞いたんだ!!」
迷わず、寺坂先輩のことをいい、誰が誰に話したかを全部調べ
いらんことを話すな!と、注意してきた、
この話はまったくをもって、腹がたった。
そのこと、景気が上向き、どんどん社員が辞めた。しんどいからか、いやなのか
それで、そんな話をするな、とは、おかしな話、世話になったひとが
辞めるということは、ぼくには大切な話だった。

最後、四国から広島に戻り、ごうてんに挨拶をしにいった。
ごうてんは笑っていた。
ぼくは、佃の店のことを思い出していた。
佃の店で、いろんなことがあって、勉強になった。何回も降格になっても
夢を語り、面白い話をして、熱意のある。やさしいごうてんだった。
ごうてんは、その後神戸に帰り、どこかのゴルフ場のレストランの支配人に
成ったと、聞いた。



おさはな、こうならなかんねん、こうすべきや、と、熱く語るごうてんは
僕の中では思い出深い店長であった。

ごうてんが辞めて、昇格したのは
井上さんだった。これも不思議なものだった。
ぼくより数ヶ月早く、井上さんは店長になり、ぼくは彼に負けたのである。
ぼくの広島と、その後の丸亀新店の苦労は井上さんの須磨の売り上げに負けたのであり、やはり、部長の一存でぼくにたっぷり皮肉を込めたのであろう。
当時の僕の上司、大角GMが、
「井上君が店長になるらしいよ・・」
あの言葉を聞いたときもショックだった、
しかし、井上さんを僕より早く昇格させるのは、みんなが嫌がる遠隔地に
行かせるというむごい条件。それに、彼には、いろいろ家庭の問題があり、
半年もたたないうちに、広島は嫌だ、ということで、関西に帰ってくる。
やもおえないことである。
しかしだ、店長になるのが目標で関東では7年か8年、関西でも5年か6年かかり
でも、成ったどころで、責任は増え、4等級店長手当5000円。
その先の目標を見失うのだ。

この項終わり。






今はなき(旧)すかいらーく、その会社にぼくは費やした時間と情熱を思い出させずにいられない。

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