107.夢野 22

キッチンで一人営業をアイドルタイム終えてから
フロアーをみると、下げがたまり、入店があったが
キッチンの服であったがフォローして、三名の家族連れを案内した。
禁煙席で三人で、ドリンクバーを一つしかたのまなかった。
これは、回しのみか・・。すぐにわかった。

カップを一つもっていき、様子を見ていた。
女の人がジュースを入れにいき、またドリンクバーに戻って
ストローや箸、おしぼり、様々なものをテーブルに持って行こうとした。
ぼくは、遠くから見ていて、やっぱりそういう客か
と、思い、テーブルにいき、注意した。
「持ち帰りはお断りします」
慌てて女のひとはテーブルのしたに隠そうとした、
隠せばいいだろうという感じで・・。
「ドリンクバーの回しのみもお断りします」
そういって下がった。
レジでずっとみてると、男の人が怒って名刺をくれ、
おまえの態度が気にくわない、そういって
伝票と金を投げつけた。
名刺を渡した。
また、本部に電話するのか、そう思った。
すぐに電話が本部にかかり、本部のセンターのものは
怒鳴られた、なにをしたのか?
よくわからない。部長にも電話するので、家までいけ、
という、
まったくを持って、わけのわからないサービスクレーム。
こういうぼくのような事例の店長自らサービスクレームを起こす、
というのがガスト転換してから相当起きた。
起きて当然である。いままでの客数の倍の量で
しかも人件費はダウン、まわせまわせ、でゆく。
しかも、その客数の中身、客層が変わっているのだ。

回しのみしてるのを注意しておこないと、
どう考えても赤字になるのはあたりまえ、
しかも、ドリンクバーでお取り下さいとのばかりで
お持ち帰りする人が急激にふえ、
なかにはドリンクバーの紅茶のはいったつぼを
そのまま持ち帰るやつもいた、
以前のすかいらーくでは起きえなかったことだ。

部長と僕とで、休みを潰してその家まで行った。
なんで、謝るのか理解出来ないクレームだった。
部長にそのことをいうと、
まず、キッチンのふくがおなかのあたり汚れていた。
ユニホームが汚い、という理由。
それと、回しのみするな、というがしてないとのこと
備品を持ち帰るな、という言い方が気にくわない。
との三点であった。

とりあえず、いえにゆくと、靴の内職の仕事をしており
相変わらず訳のわからない話をしだした。
部長は第一声、
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「気を悪くされてすいませんでした」
と、謝罪した。
相手の男は
「糖尿でしんどいんや、ほんま」
と、言い出し。
「この家な、2500万でかったんやけど、こうてくれるか?」
と、言い出した。
話がまったく出来ない相手だ。
よく見ると女のほうは顔をケガしていた。
「治療費をだせ!」女は言い出した。
あとで、この人に「殴られたんや」。
僕に注意されるような恥ずかしいことをしたので
車のなかで、男は女を殴ったらしい。
それでケガをしたから治療費をよこせ、という。

ぜんぜん違うクレームのことを言い出した。
どこかの会社の製品がわるかったから文句いうたのだ・・。
とか、
くつをスーパーに納品してるけど、どこもおかしくないのに
返品されることもあるわ・・。

言ってることが支離滅裂。
その前で、小さい子供が、学校にはいってないのだろうか
おもちゃで真ん中で遊んでいる。
不思議な光景だった。
部長が謝ってるので、謝る必要も無いのに
ぼくも早く帰りたいので謝った。手をついて
土下座のかたちだった。屈辱的であった。

部長はさっと財布から一万をだし
これで、なんか気持ちお詫びに・・。
と、言って差し出した。
彼らは最初は受け取らない、

今度はフェニックスのガストの店の悪口を言い出した。
あそこの店の内装が悪い、飯はまずい、
とか、

一万円札がテーブルに置かれたまま。
彼らは様子をみてるようだ。
「ほんだら、それで、従業員のパート(くつの)ひとに
お菓子でもかおか、」
受け取った。
ドリンクバー一杯で、一万円を彼らは得たのだ。
男は自尊心をとりもどしたのか
僕に向かって。
「あんたは正しいわな・・ただしい」
ぼくは、何を言い出すのかと驚いた。正しかったらなんで
本部に電話で怒鳴るのだ。
「こいつが悪いからや、また、あとで殴ってやるわ・・」
女は
「治療費をだせよ!」
と、またほざきだした。
そんな話のなか、こどもは車のおもちゃで
真ん中で遊んでいた。
とりあえず、金を受け取ったということで
納得した、ということで、帰った。
部長は、あとで、店の領収書で
一万円、きってくれ、といった。なんだ、自分で負担するのか
と思っていたので驚いた。
そして、ふと漏らした。
「あいつら、行かれてるな、こどももおかしいな・・」
ぼくはもう言葉もでなかった。あほらしかったのである。
確かに冷静に自分をみると、注意の仕方や
相手の判断の仕方が間違っていたのだとおもう。
しかし、納得はできなかった。

別の日に、目の前でドリンクバーからごっそりガムしろを
ぱくった青年がいた。友人もいて、レジに向かうときだった。
後ろからぼくはいた。
その友人は
「止めとけよ!」
と、注意したが、その男はがばんにガムシロを入れた。
ぼくは、注意する気も起こらず、レジに向かった。
売店でもぬぐるみをヤンキーが万引きしていた。
とてもやばそうなやつだった、バイトの人がぼくに言ってきた。
「注意して殴られたり、文句いわれるかもしれないので
あんなやつらはほっておいてください」

やはり、そうなるのは当然であろう、
本部の物がクレーム内容を鵜呑みし、
そのまま現場のものに事情を聞かずに謝罪すれば、
当然のことだろう。
この頃から、お客とチェーン店の店の物の相対関係はおかしくなる。
何かあればクレームをあげ、店で罵り、本部に罵り
店のものは責められ、ココロが折れる。
いまでこそ、カスタマーハラスメントというものがあるのだが、

もう、完全にぼくはやる気ゼロの心中だった。
それは誰も知らないことだった。