103. 夢野 18

相変わらず、日曜日祭日は、朝5時半からスタンバイをし、上がれるのは
23時頃、実棚(発注)を終えて、見届けてから、
こっそり帰る。だれも彼もお疲れ様はいってくれない。
「もう、上がってください、あとはやります」もない。
みんな、店長というのは体を張ってやるもんだと思ってる。
ふらふらに、なって、マンションに帰ると
結婚したばかりというのに、全然家に帰ってこないぼくを
待ちぼうけをくらい。
ご飯にはラップをかけて、ソファーで寝ている奥さんがいた。

独身の時はいいけれど、結婚すると家に帰るという
共同空間がある。

会社の人間の離婚率は高い、
浮気ばかりするということではなく、
店の激務で仕事ばっかりする、休みが取れない
そんな人間と結婚して、面白いわけが無い。

よっぽど、孤独に耐えれる強いひとか、子だくさんで
実家のほうにべったり帰れる環境があるか、

皮肉なもので、ファミリーレストランで働く社員は
自らのファミリーを不幸にしてしまうのがよくあるのだ。

全然帰ってこない旦那様、
いったい、わたしはこの先の人生、ずっとこうしてるのか
そう、思い悩み、うつにもなるひとはたくさんいた。
過重労働と、過重な責任感である。
会社の作戦は大成功であるが、着実に、社員たちは
チカラつきてゆく。

当時、これまた、副社長の発想からか
新店舗は、新任店長にする、と決めた。
これは、酷い施策だった。
それで、新任なら、若いし、新婚のものもいた、
ある四国の新店で、馬鹿売れし
そこも新任で新婚だった。
ひと月で奥さんは実家に帰ってしまった。
誰も知らない知らない土地で、帰らない旦那を待ち
本当に可哀想なものであった。
難のために仕事をしてるのか・・。

ぼくも全てを犠牲にして、新規店舗に捧げた五年間、
彼女に愛想尽かされて当然の結果である。
それでも、よくつきあってくれたとおもう。

哀れな社員、たのしそうに食事をするお客さん、
その裏にはいろんなことがあるということ・・。

ぼくも、思い始めたこと、
「なんのために働いているのか?」
そう自問するようになった、
そして、若い社員にも聞いて見た。

「なんのために働いてるのか?
なんのために、この仕事をしてるのか?
他にはいっぱい仕事がある。」