105. 夢野 20

人手不足で売れに売れていた店が、人が採れて売れなくなった。
この売り上げダウンの現象は冷静に考えればわかることであったが
新しい部長は、理解してないようであった。
いまの数字、いまの状況を変化して利益をだすことが至上主義であったからだ。

店長連中もかなり厳しい状況が続き、そして、退職者も毎年100人近くでて
そんななか、本部の人間のリストラと、エリアマネージャーたちへの
労働強化も行われていたようだ。

事業部制ではできたものの、大事業部制もなくし
全ての管理を本部が一括してできるわけもない。
エリアマネージャーは、とうじ部長という名前であったが
この1998年から2000年以降、かなりの人間が脱落してゆく。
現場の理解出来ていない、理解する必要も無いとおもってる
役員たち、幹部たちが横暴な施策をあげ、指示を出し。
たとえば、一日で何店舗回ったかで、点数をつけるといった
馬鹿げたこともしだした。

あるとき、バイトの女の子が
「店長、電話です!」といってきた。
「誰からですか?」
「なんか、横川さんとかいうひとです」
ぼくは、またクレームの電話か、と、嫌な予感をしながら
電話を取ると

「あのね、最近、よく、部長のいうことを聞かない店長がいるとか
いうんですが・・。」
ぼくは、何のことかわからず
「ええと、どちら様ですか?」
「ええと、横川です」
「どちらの、横川さんですか?」
相手は少し酔っ払ってるようだ。

ディナーの忙しいときになんだ、こいつは!
「もう、切りますよ!」
ぼくは、怒鳴った。
すると、
「ああ、ごめんごめん、佐伯です、部長です」
「は?」
「さっきのは副会長の横川紀夫さんだ!」
「えええ!」
僕は驚いて受話器を降ろした。

副会長がなんで、ぼくにイタ電をするのか。

部長のいうことを聞かないので、しかって貰おうとしていたのか、

謎だった。

その後、新業態でいろんなことをしていた副会長は
別会社を立ち上げ、資本も別で会ったので、株買収トラブルにも
巻き込まれず、
新しい上場会社を作った。
なんと、そこの会社の社長はその佐伯さんだった。
よくよく考えれば、
出世し続けていた彼と、どんくさいダメ店長sであったぼくは
同じ年でありながら、相当な差が付いていた。

組織の中で昇ってゆくには相当の努力とごますりも必要。
いまになって、そう思う。
まずは、会社を批判したり、文句ばかりいってるのはだめ、
上のひとのごまをすらないとだめ。
ごますりなんて嫌だ!そう思うのがあたりまえ、
ぼくも、そう思っていた。

でもな、自分の店で、文句ばかりいうやつと
喜んでなんでもやってくれるやつと、どちらが好きか?大切か?

そう、自分の立場を変えるとわかりやすい。

組織にあう人間とあわない人間がいる。

もうひとつ、負けず嫌いであること、
あいつには負けない、と思うことである。

大川原さんがそうであったし、佐伯さんもそうであった。
「佐伯の出す数字以上のものをだす!彼奴には負けない」
と、大川原さんはよく言っていた。
結果、この2人は代表する人間になった。